AST の SpaceMobile は実現可能か

空に基地局配置できればエリア100%になるんじゃね? という発想から生まれたSpaceMobileプロジェクト。

既存端末で利用できるというが、本当に実現可能なのだろうか。

個人的には投資詐欺だと思っている。


基地局と端末の通信を考えるときに、下り通信に目が行きがちだが、上り通信も当然必要である。

下りはビームを絞って送信パワーを上げればなんとかなるかもしれないが、上りは既存端末の能力でしか発信できない。

受信側のゲインを上げればいいんじゃないかとも思えるが、そう簡単な話ではない。

地上基地局と通信している端末も、上りの電波を発信している。それらの電波も全て衛星側のアンテナで拾ってしまう。

話し相手以外の端末からの電波はノイズでしかない。

衛星通信を前提としたプロトコル設計なら、どうにかなると思うし、実際サービスが実在する。しかし、地上用に設計したプロトコルのまま衛星通信するのは無理があるだろう。

このブログをお読みの方はご存知のTAは100kmが上限である。絶対にこれを超えることはないだろいうと想定している基地局端末間の距離が100kmである。

SpaceMobileの軌道は地上700kmを超える。


様々な発表を見ていると、「吹かしてますよ(ウソだと分かってよ)」と暗に言っていると思われるところがある。

1つは、ASTの利用イメージのコレ。

network-phone.jpg

圏外なのでスペースモバイル使いますか?って画面。

専用端末なら可能だろうけど、既存端末でこの画面を出せるのだろうか。

(1日パスを使うかどうか聞いてるのに、Yesで月額プランに誘導されちゃうのも突っ込みどころでしょうか。)

 追記:海外ローミングでこういったSMSを飛ばしてくるのは実在するようです。Twitterでコメント頂きました。


あと、飛行機の中で使えるとしている点。

地上の屋内は使えないのに、なぜ飛行機の中なら使えるのか。

「宇宙に近いから」みたいな小学生的発想だろうか。

SpaceMobileの軌道は地上700kmなのに対し、飛行機は高々10kmである。


個人的に注目したいのは、この投資詐欺の出口戦略である。失敗の原因をどこに持っていくか。

当初は、「規制当局が許可してくれないから」みたいなことを想定していたのではないだろうか。

通信方面ではサービスリンク・フィーダリンクそれぞれの免許が必要だ。衛星方面では、打ち上げ許可と、軌道の許可が必要だ。

通信方面は先に書いたように無理、衛星方面も前代未聞の大きさと数の衛星を軌道に乗せるという傍迷惑な計画である。

無理なので許可が降りない。実現しないのは我々のせいではない。技術に明るくない規制当局のせいだと言える。

しかし、規制当局のほうが上手だった。規制当局側もこっちのせいにされたくない。許可してしまった。


「三木谷さんは騙されている」という向きもあるが、私はそうは思わない。「騙されたフリ」をしていると思う。

1億ドルを超える投資は宣伝広告費として払っているんだと思う。将来エリアカバレッジが100%になりますよと言いたいために。

基地局投資の6000億円に比べたらはした金、とまでは言わないものの、宣伝広告費としてはまあまあアリな金額なのではないだろうか。

失敗の原因は外側にできるしね。


※このブログエントリは個人の妄想です。